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2010年1月11日月曜日
平和な船上
青と蒼、空と海の境界が混じりあう一面のあお。
一艘の船が白くそれを切り裂きながら進んでいた。
風をはらんだ帆はピンと張り、看板には明るい日差しが降り注いでいる。
風に乗った海鳥達は高らかに鳴き声を上げていた。
海を走る船、と言えば輸送船か海賊だ。
この船の場合は明らかに後者であろう。
足の速そうな細身のシルエットや、側壁に備えられた大砲。
そして何より掲げられた海賊旗がそれを示している。
看板上で忙しそうに立ち働く中の一人が、眩しそうに目を細めながら空を仰いだ。
その金の髪は陽光を反射し煌めき、蒼い瞳は海の深淵を切り取ったかのよう。
ただその右目だけは頭に三重二重と巻かれた布によって隠され、うかがう事は出来ない。
シャツにズボンという軽装で、掃除中なのか手にはデッキブラシを握っている。
彼は一時手を休め、海鳥の姿を厳しい目つきで見つめていたが、すぐに眉間のしわを緩めて掃除に戻った。
看板を清めていくその動きは、心無しか楽しげだ。
そしてそんな彼を見つめるものが数人。
「…ってか、なんで弟くんに掃除させてんの?」
「そーやで。まぁ、一応新入りではある訳やけどなぁ。」
「うっせぇな。俺はやんなくていいっていったんだぜ。」
それをアイツが勝手に…、と銀髪の男が不満げに続けた。
舵にもたれかかるようにして立つその男は、血のような深紅の瞳に、よく磨いた剣のような銀の髪をしており、とても先の男と兄弟とは思えない容貌である。
その両側で同じように金髪の男を眺めるのは、緩やかに波打つ淡い金髪の柔らかな雰囲気の男と、栗色の短髪をした日に焼けた溌剌とした男。
「お兄さん、あんなムキムキの新人はやだな〜。」
「威圧感ばりばりで掃除しとるから、ロヴィーがビビっとるやん。」
「うっせ。俺の可愛い弟に何を言うかてめぇら。
船から叩き落とすぞ。」
半眼で左右を見ながらいった銀髪の男に、二人がきゃ〜船長横暴〜、と笑いながら答える。
騒ぎに気が付いたのか、先の金髪の男が顔を上げ、三人の方を見やった。
それに気付いた銀髪の男が声を張り上げる。
「ルッツ〜!程々でいいからな〜!」
「手抜きはしない!でもありがとう、…兄さん!」
嬉しそうに返す金髪の男ールートヴィッヒは、少し照れたように銀髪の男を兄と呼ぶと、赤くなった顔を隠すようにそそくさと顔を背けた。
「…前言撤回。あんな新人ならお兄さん大歓迎だよ。」
「ちっちゃかったら可愛いのんにな〜。」
「おまえら…っ!」
今すぐ海に飛び込め船長命令だっ!!と叫び出す銀髪の男と、笑いながら逃げる二人。
その光景にいつもの事なのか、他の船員は慣れた苦笑を浮かべる。
船上は恐ろしく平和だった。
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