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2010年5月28日金曜日
ラメントパロ地中海編 はじまり
あるところに小さな集落がありました。独特の文化をもち、藍閃からの商人と細々とした取引をする以外は外と交流もない本当に小さな集落です。気がよく面倒見のよい族長と無口だがしっかり者の知恵猫が治めており、皆が家族のようにして穏やかに暮らしていました。
そんななんでもない集落にある日突然呪いが降り懸かりました。何故呪いが集落を襲ったのか、理由はわかりません。それにそんなことより呪いに対処する方が重要だったので理由を考える暇なんかありませんでした。
族長と知恵猫は考えに考えてある結論に至りました。集落全体にかかるはずだった呪いを2匹だけで引き受けようというのです。普通ならそんな事不可能でしょうが、この知恵猫はとても長生きをしており魔術にも精通していた為、その方法を知っていました。
知恵猫は何度か難しい計算をして2匹なら大丈夫だろうと思いました。しかし族長は自分1匹だけで呪いを受けると言い出したのです。2匹で受けてしまえば万が一それが上手くいかなかった時に集落を守るものがいなくなってしまうから、というのが彼のいい分です。確かに知恵猫以上に知恵のあるリビカはいませんでしたし、他の集落に助けを求める時間なんてありません。
でもそれはとても危険な事です。本来多くのリビカ達にかかるはずだった呪いを2匹だけで受けようというだけでもどうなるか分からないのに、それを立った1匹で受けようというのです。もしかしたら死んでしまうかもしれません。
しかし族長は集落を守るのが自分の務めだし、もし死んでしまったとしても知恵猫が残って集落を守ってくれればそれでいいのだとして譲りませんでした。知恵猫はとても悩みました。族長は長く共に集落を守ってきた友人で、無口な知恵猫の唯一ともいえる理解者でした。彼を失うのはとても悲しい事です。しかしあまり悩んでる時間もありません。最後には彼の意思を尊重する事にしました。
さて、これら一連の事は集落のリビカ達には知らされず、2匹の間でこっそりと決定された事でした。集落の誰も呪いには気が付いていませんでしたし、わざわざ知らせて混乱を起こすのは避けたかったからです。2匹は一見何事もないかのようにいつもどうりに日常を過ごし、その裏で迅速に準備を進めていました。
しかしある1匹の若者が2匹の様子がおかしい事に気が付いたのです。族長の甥っ子です。この若者はちょっと変わった猫でした。リビカ達の本能であるはずの縄張り争いにもほとんど興味を示さず、いつも何事かに思慮を巡らせては遠い所をみているような猫なのです。
親を早くに流行病でなくした若者は、叔父である族長にほとんど親のようにして育てられました。何かと反発しあってばかりの2匹は傍目には仲が悪いかのようでしたが、族長はなんだかんだでこの若者を大切に思っていましたし若者も心の中では族長を尊敬していました。ですからでしょうか、若者は族長の異変にいち早く気付きました。
若者は2匹を問いつめ呪いの事や族長の覚悟を知りました。そして自分も呪いを引き受けると言い出したのです。もちろん族長が反対するだろうと若者には分かっていたので、それは儀式の直前に知恵猫にのみ告げられました。認めなければ儀式の邪魔をして呪いを集落にばらまいてやるという脅し付きで。
知恵猫はまたもや悩む事になりました。族長にとって大切な猫は彼にとっても大切な猫です。若者に呪いをかけるなんてとんでもありません。しかし若者には魔術の心得が多少ですがあったのです。もし約束を違えようとすればそれを見破り、宣言通り族長を守るために儀式を邪魔するでしょう。それだけはさけたい事態です。
結局呪いは若者と族長、2匹へとかけられる事になりました。若者が加わった事は族長には内緒でした。説得する時間もなく、さすがの知恵猫にもそれ以上の案は思いつかなかったのです。
そうして儀式は行われました。
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