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2009年12月16日水曜日

帰路を急ぐ


heta125



(今日も遅くなってしまった…。)
時間が時間なせいか、人影も疎らな通りに靴音が響く。
道の両脇に備えられている電灯が、ぼんやりと道を照らし出している。
吐く息は白い。
冬なのだ。
(最近デスクワークが多かったから気付かなかったな。)
仕事は暖房の効いた室内で、移動はもっぱら車。
外界の寒さに触れる事なんてなかった。
(早いものだ。)
ついこのあいだまで秋のような気がしていたのに、もう年が終わろうとしているなんて。


(しかし、寒いな…。)
怖い顔をしていますよ、と気のおけない同僚から指摘された。
自覚はあった。
年末の忙しさの所為か、ここの所、書類とにらめっこをしては眉間にしわを寄せている。
(元々愛想のある顔じゃないのに…どうしようもない。)
唯一の肉親にそんな顔を見せたくない。
それで気分転換をしたくて、公用車を断り、無理をいって歩いて帰っているのだ。
だがこんなに寒いとは思わなかった。
(頬と鼻の頭が痛い…。)
寒い、を通り越して、痛い。
きっと真っ赤になっているのではないだろうか。
耳たぶに至ってはもはや感覚がない。
(次回からはマフラーがいるな。)
そんな事を考え、コートの前をしっかりとあわせると、足を速めた。


前方に目指す家が姿を現してきた。
いったい誰がここに「国」が二人も住んでいると思うであろう、郊外に建てられた、質素な一軒家だ。
だがよく手入れされた庭には、控え目ながらも花が綺麗に咲き誇り、草木がのびのびと育っている。
外壁までも掃除を欠かさない家は、いつも不思議な落ち着きを持って人を出迎えるのだ。
———それも今は闇の中だが。
(帰ってきた。)
そう思うと寒さも苦痛もなぜか厭わしいと感じられなくなるから不思議だ。
この家に、ここに、彼の人のもとに。
今日も帰ってきて、ともに過ごせるのだと思うと。
(…幸せ、だ。)


あと少し。
きっとあの人は寝ずに待っているだろうから。
(Ich bin zu Hause.)
少し早い帰宅の知らせを胸の内で呟いて。
残る距離を駆け出した。

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